時間が経ってしまいましたが、2023年度税制改正法案が衆議院にて3月10日に可決されました。インボイス制度につきましては昨年末に発表された税制改正大綱の時点でも注目されており、気にされていた方も多いと思いますので、いまさらですが改めて振り返ってみます。
大きな区分としては4つありまして、免税事業者がより登録しようと思える措置、小規模事業者の負担を軽減する措置、適用事業者全体の負担を軽減する措置、そして登録申請の実質的な期限の延長です。
詳細は各項目のところで記載しますが、これまで色々なところで指摘されていた制度の不備とも言える部分が改善されていたり、免税事業者への配慮もあったことから、これ以上の緩和や延期はしないという意思も見え隠れしているように感じました。

①免税事業者に対する配慮

本来消費税の免税事業者であったものの、あえて課税事業者となる場合に、消費税の納税額が売上に係る消費税額の2割となる措置が講じられます。(令和5年10月から3年間)こちらは消費税を納めなくて良い事業者(免税事業者)がインボイス制度を登録することで負担が大きく増えないようにし、登録を促す内容となっています。


制度適用に当たっての注意点は以下の通りです。
・卸売業の場合は簡易課税制度を適用した方が納税額を少なくできます。
・以前から課税事業者を選択している場合には適用されません。
・課税期間を短縮している場合には適用できません。

②小規模事業者に対する配慮

基準期間の課税売上高が1億円以下または特定期間の課税売上高が5,000万円以下の場合は、1万円未満の課税仕入れについて、インボイスの保存がなくても帳簿があれば仕入税額控除ができます。(令和5年10月から6年間)

こちらは売上規模がそこまで大きくない事業者に対して一定の配慮を行ったものと思います。期間が6年間と長めで、相手が免税事業者であっても1万円未満の経費であれば仕入税額控除ができるということだと思いますので、対象となる事業者にとっては助かりそうです。

③事務負担の軽減

税込1万円未満の値引き等については適格返還請求書の交付が不要になります。
売り手が値引きや返品、リベート等を行った場合には適格返還請求書の交付が必要ですが、1万円未満のものは交付が免除されます。

これまでは振込手数料が売り手負担となる場合に、適格返還請求書の交付が必要とされていましたが、それが不要となります。値引きや返品が殆どない事業者でも、こういった処理対応が不要となることはとても大きいのではないかと思います。

④登録申請に対する配慮

インボイス制度適用開始時点(令和5年10月1日)から適用を受ける場合、令和5年3月31日以後の申請には期限までの申請が困難な事情の記載が必要でしたが、改正案では不要となりました。

これまでは令和5年3月31日までに登録申請を考えられていた事業者が多かったと思いますが、当時においては少し猶予ができたというイメージです。色々お話をお伺いしますと、登録に迷われている方や、取引先へどのように話すか悩まれている方はまだまだ多いよう、税理士をしていても、世の中の方向性がまだまだ見えないように感じます。

一点だけ注意していただきたいのは、駆け込み的に登録が重なると申請から登録番号の通知までに時間がかかる可能性があり、請求書等に番号の記載が間に合わなくなることも考えられます。周囲の動向を確認することも大事ですが、ある程度余裕を持った申請をおすすめします。

おわりに

今回は税制改正大綱で公表されたインボイス制度の改正について改めて確認してみました。
制度開始の令和5年10月1日までにはまだまだ補足や解釈に関する情報が出てくると思いますので、しっかり確認しながら重要なものはまた解説したいと思います。

なお、上記内容はあくまで私個人の解釈ですので、これから出てくる情報や取扱い等と異なる可能性が十分ありますのでご注意をお願いいたします。

最後までお読みいただきましてありがとうございます。
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