はじめに

税理士との契約は一般的に長期にわたるとされており、契約変更の割合は少ないと言われています。一方で、税理士への不満を抱えたまま契約を継続されている方も多く、きっかけがあれば変更したいと考えている方も一定数いらっしゃるようです。

変更の理由としては、料金がサービスに見合っていない、レスポンスが遅い、税金や経営に関する提案をしてもらえないといった不満から、税理士の高齢化(なんと税理士の平均年齢は60代!)や社長の交代といった環境の変化に伴うものまで様々です。

税理士への不満を事前に予期することは難しく、実際に契約し、仕事をしてみて分かることも多いと思います。それでもなるべく失敗を防ぐにはどうしたら良いか考えてみました。求めるものは千差万別で、共通の解は存在しませんが、税理士選びの際に少しでもお役に立てたら幸いです。

創業時との大きな違い

すでに税理士とお付き合いがあるので、どういったことをやってくれるかおおまかに分かっていること、新しい税理士を探している間は現在の税理士にお願いできるため、時間をかけて探せること(契約の縛りには注意です。)、この2点が大きな違いです。

これらは税理士選びにおいて大きな利点となります。現在の税理士と比較して変更のメリットが大きい税理士がいなければ、現状のままお願いすればいいですし、変更にタイムリミットも無く気長に探すことも可能です。急がず慌てず、でものんびりし過ぎず税理士を探してみてください。

失敗しやすい事例

税理士の変更で意外と意識せず失敗してしまう内容として、以下の2点があります。
・これまでの税理士の業務ベースで考えてしまう
・現在の不満点に注目しすぎてしまう

新しい税理士を探されている方からご相談いただく際に、料金は尋ねられるものの、どんな業務を含んでいるかまでは気にされていないことが多いようです。現在の税理士と同様のイメージされているようですが、顧問料と言っても含まれる内容は税理士によって千差万別ですので、ぜひ業務内容と合わせて確認してみてください。料金が高いと感じた分、対応範囲が広がる可能性がありますし、業務の調整によって価格交渉ができるかもしれません。

また、税理士への不満にとらわれすぎてしまうと、拙速に税理士を探してしまい、現状満足できている部分を見落としてしまいがちになります。不満点を解消できたのはいいけれど、別の不満が出てきてしまい・・・といったこともお聞きすることがあります。不満点にも目を向けつつ、現状の良いところも認識したうえで、税理士変更について考えてみてください。

税理士に求めることを再度見直す

今一度、税理士に何を求めるかを検討してみることが良い税理士探しの第一歩になります。不満点を解消することに加えて、現状の良いところ(=今後も継続してサービスを受けたい内容)についても考えてみることが大切です。

見直しの方法として、一度紙に書き出してみることをおすすめしています。頭の中でまとめようとすると個別的になってしまうので、思いつく限りの内容を書き出してみると考えがまとまり、内容の検討漏れも防げます。また、視覚で全体を把握することによって各項目の重要性を比較したり、新しい視点が生まれたりします。

変更しないという選択肢も考える

税理士の変更は大変です。新しい税理士に会計処理や事業について理解してもらう必要がありますし、過去の取引についても説明する機会がでてくるかもしれません。また、色々な書類の再提出が必要になり、以前の税理士との関係悪化から書類を出してもらえないこともあるようです。(完全にその税理士が悪いですが。)

変更を考えている理由が解決できそうな内容(料金が多少上がってもサービスを手厚くしてほしい、業績が厳しいので少し料金を下げてほしい等)であれば、相談してみると対応してくれるかもしれません。税理士側も何らかのアクションがあったら、真摯に受け止めて考えてくれると思います。もし対応してもらえないようでしたら、気にせず新しい税理士を探せばよいだけです。

変更すると決めたなら

見直した「税理士に求めること」を参考に、新しい税理士を探してみましょう。探し方は「失敗しない税理士の選び方(創業編)」の「どうやって税理士を探したら良いか」と同様です。事業も軌道に乗っていて、経営者の知り合いも増え、金融機関との結びつきも強くなっていると思いますので、より探しやすいのではないでしょうか。

同業の経営者に良い税理士を紹介してもらうのはいい方法だと思います。その業界に実績があり、評判の良い税理士ということになりますので、業務レベルは期待できます。同じ税理士に見てもらっていることが気になったり、特殊なニーズが無いようでしたら検討してみてはいかがでしょうか。

不満が無くても見直すタイミングがある

お付き合いされている税理士に満足しているのはとても素晴らしいことです。このまま良好な関係を続けていけたらベストですが、それが必ずしも正解とならない場合があります。
そんなタイミングとして、2つ例を挙げてみました。

①海外展開や上場準備を始める、上場企業の子会社となるといった特別な要因が発生した場合
②経営者の代替わりや、経理体制の見直しといった内部要因の変更時

①については、税務や会計の対応が大きく変わる場合があります。海外取引が発生すると、状況によって国際税務と呼ばれる専門性の高い分野の知識が必要となりますし、上場が関係してくると、会計処理が複雑になり、こちらも専門性が求められることとなります。税理士がその分野を十分に理解していれば良いのですが、そうでない場合は思わぬ負担や損害が発生する可能性があります。

②については、経営者と税理士の年齢の開きがあまりに大きいと、近い目線での経営相談が難しくなりますし、新しい会計システムの導入や経理体制を構築したいときに、税理士が足枷となって進められないことがあるからです。例えばクラウド会計の導入をしたくても、税理士が対応していない場合は導入が頓挫してしまいます。管理体制の強化や効率化に大きく舵を切る場合には、税理士の見直しも一つの選択肢となります。

税理士の変更を積極的におすすめするわけではありませんが、大きな環境の変化がありましたら検討してみるのもアリかと思います。

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