経営で重要なことの一つとして、資金繰りがあります。業種にもよりますが、多くの会社は支払が先で入金が後となります。
例えばパンを作って販売する場合、まず材料を購入した段階でお金を支払い、実際にパンを作り、販売できた段階になってやっと入金となります。
材料は毎回使い切ることができれば良いですが、長く保有するほどパンを販売してお金が入ってくるまでに時間がかかります。(在庫の問題)
更に、企業間の取引については「掛け」と呼ばれる制度が基本で、販売や仕入のタイミングと実際の入金や支払のタイミングとにズレがあります。
これらのことから、売上高ではなく入金額ベースで捉えている経営者も多くいらっしゃいます。

今回はこの資金繰りについて、どのように捉えたら良いか考えてみました。

1.お金の流れを把握する

まずは「材料仕入⇒製造⇒販売⇒お金の回収」のような流れを把握することが重要です。自分の事業がどのようなサイクルになっているか、考えてみましょう。
製造の工程が無い会社であれば「商品仕入⇒販売⇒お金の回収」、仕入が無ければ「サービスの提供⇒お金の回収」かもしれません。

事業のサイクルが分かったら、それぞれの業務の期間も考えてみます。
材料を仕入れてから支払まで、材料から商品を製造するまで、商品を製造してから販売まで、販売してから入金までの期間です。

例えば仕入が月末締めの翌末払い(30日サイト)、材料仕入から製品の完成まで1ヶ月、
製品が完成してから販売まで1ヶ月、販売が月末締めの翌末回収(30日サイト)として日付を考えてみると、
9/10に材料を10万円で仕入れたら、製品の完成は10/10、販売は11/10となります。

9/10の仕入の締め日が9/30となるのでお金の支払は10/31、11/10の販売の締め日は11/30なのでお金の回収は12/31となります。
この場合、10/31から12/31までの間は10万円が不足することとなりますので、
会社のお金に余裕が無ければ金融機関からお金を借りたりする必要があります。

2.会計や税務の考え方を知る

会計や税務の場合は、お金が動くタイミングではなく、発生のタイミング(仕入れや販売をした日)で考えます。
仮に入金までに長い期間が必要だったり、回収が遅れたりしても、販売や工事が完了していたら売上となり、利益が出れば税金を納める必要があります。

これは、利益を正しく把握するためにとても重要で、お金の動きだけを見るのではなく、会社が本当に儲かっているかを確認することで、
その後の事業活動をどのようにするかの判断材料にもなります。

金融機関等からお金を借りる場合も、こちらの考え方をもとに作成した決算書等が重要になりますし、
会計や税務の考え方は事業を行っていくうえで切り離せないとても大切なものです。

3.会計と資金繰りの両面を把握する

会社は利益を出さないとお金が無くなっていき、倒産してしまいます。
ですが、どれだけ利益が出ていても、お金の回収が遅くなってしまうと支払いのためのお金が無くなり、倒産してしまうこともあります。(黒字倒産)
ですので、重要なのは発生ベース(会計や税務の考え方)での利益を把握したうえで、支払いが適切にできるよう資金繰りにも目をむけることです。

もちろん資金に十分な余裕があって、支払いに頭を悩ませる必要が無かったり、借入をしなくて良い場合は、
資金繰りについて深く考える必要は無いかもしれません。
ですが、多くの会社では、事業の悩みのひとつとしてお金の支払いのことがでてくるように思います。

もし、売上や費用、そして利益の管理(適切な会計処理)と、いつのタイミングでどれくらいのお金の支払が必要かを把握できていれば、
それらのために時間を使ったり頭を悩ませたりするのではなく、事業の発展に向けた時間や活動ができるのではないでしょうか。

会社にとって事業活動が大切なのは当たり前ですが、その活動も会計に利益が残り、お金が回ってこそです。
自社でこれらを把握できるなら良いですが、そうでない場合はぜひ税理士に話してみてください。
また、多少の費用がかかっても、3カ月に一回程度は利益が出ているかどうか把握することをおすすめしています。
年1回の決算時にだけ数字を確認することと比較して、費用以上に得るものがあると思います。

4.おわりに

資金繰りについて文章を書いてみると、改めてその大切さに気付かされたように思いました。

利益の計算は少なくとも年に1回ありますが、資金繰りについては考える機会が無いこともあり、
私自身、その重要性をしっかり伝えられていなかったなと反省しております。

利益はもちろん、資金繰りにもしっかり目を向けて、事業のサポートを行っていきたいと感じました。

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